令和6年10月16日(水)産経新聞 朝刊にこのような記事が掲載されていました。
交通事故やスポーツのケガでむち打ちになり、怒りっぽくなった。言葉がうまく出てこない。脳に損傷を負い、記憶障害や感覚過敏などを発症する「軽度外傷性脳損傷(MTBI)]。日本では、推定で約135万人の患者がいるという。傷が微細でCTやMRIで写らずに見過ごされ、適切な治療や補償を受けられないまま高次脳機能障害などに苦しむ人も多い。広島の弁護士有志で結成した弁護団と地元の専門医が、認知度を広め患者を救いたいと奮闘している。
MTBIは追突事故やスポーツ外傷などで頭部に衝撃を受け、脳の神経線維が損傷して発症する。「道路のラインが盛り上がって見え、横断歩道を渡れなかった」「見積もりの計算ができない」広島県内の大工の男性(65歳)が、むち打ち後から続く症状を語った。昨年3月、車で信号待ちをしている時に追突された。直後はしばらくぼーっとし、吐き気がしたと振り返る。
事故後は材料の注文数を間違えることが増え、何事も面倒に感じるようになった。性格も攻撃的になり、50年来の友人を二人失った。「いつ治るのか。大工としてあと10年は働きたいが・・・」現在もクリニックで治療を受けている。平成29年、MTBIに苦しむ人々を支援しようと、広島の弁護士が有志で全国初の弁護団を結成。事故の加害者に損害賠償を求めた訴訟の支援や、相談活動に取り組んできた。弁護団長の平田かおり弁護士は「病院を何軒回っても異常なしとされたり、症状によって家族や職場の同僚との関係性が悪くなったりする患者もいる」と語る。平田弁護士によると事故後の生活に支障が出ても、MRIや外傷性の異常がみられないとして、高次脳機能障害などが認定されないケースが多いという。国土交通省は28年、各保険会社に画像所見が認められない場合でも適切に対応するよう求めた。ただ対応は以前変わらず、訴訟を経て、ようやく後遺障害が認定された患者もいる。今年3月には、宇土会長と弁護団で、MTBIを知ってもらおうと、発症の仕組みや患者救済に向けた課題を紹介する本を出版した。平田弁護士は「MTBIを広く知ってもらい、被害者が救済されるよう、今後も活動していきたい」と話した。